敏感な僕の話
僕は、昔から色んなものに敏感だった。
大きな音がすると、よく泣いていたと親から聞いた。
その典型例が、花火大会だ。僕はその光景を少しながら覚えている。
地元の花火大会。両親に連れて行ってもらった。当時まだ、僕は小学校の低学年だったように思う。
こんなお祭りは大体、駐車場から距離がある。近くの駐車場がいっぱいだから、遠くの駐車場から歩いてくるのだ。
とてもワクワクしながら、舗装されていない草まじりの道を歩いていく。足元には少し伸びた雑草や小石が混じり、丁寧に歩かなければ転けてしまう。
遠くでは、賑やかそうな声。屋台の明かりが、僕の胸をワクワクさせている。
屋台の香ばしい香りが近づいてくる。焼きそば、イカ焼き、りんご飴、綿菓子などの食べ物。お面、おみくじ、射的。好きなゲームや欲しかったエアガンがたくさん並んでいる。全てが、僕をファンタジーの世界に連れて行ってくれる。
僕にとって、夏はこのようなイベントがあることが大好きにさせてくれる。
花火大会。それは、夏を象徴させるようなイベント。
しかし、小さい頃の僕は少しだけ、みんなと感じ方が違っていた。
花火のカウントダウンが始まる。
爆音とともに、火を伴った花が夜空に咲く。そして、立て続けに何発も何発も真っ黒な空に花が咲き誇る。手に持ったかき氷を溶かしながら花火を見上げる。大きな歓声に火薬の匂いが混じった空間が一気に夏を演出する。
そんな時、僕は大声をあげて泣き始めた。大きな音が耳の中に入ってくる気がして。
体の中を蝕んでいる気がして。
そこからの記憶はあまりない。多分ずっと泣いていたのだろう。
親がそんなことを言っていた気がする。
大人になるに連れて、花火が怖いと思うことは無くなった。高校生になった僕は、好きな女の子が浴衣でいるんじゃないかなんて思いながら友達と花火大会に出かけた。
今では花火が見たくてたまらない。この御時世で今年も花火が見れるかどうか分からないが。
怖かったものが怖くなくなる。それが大人になっていくことかもしれない、なんて思った夜。
僕は、自分の中の子供を置き去りにしてしまったのではないだろうか。
そんな子供を拾い集めて、まだ僕は大人になっていくのだろう。
今年もどこかで大きな音を立てながら夜空に花が咲く。